どうしても 生き てる。 『どうしても生きてる』(朝井リョウ)の感想(104レビュー)

【書評】『どうしても生きてる』朝井リョウ著 市井の人々の胸中を描く

どうしても 生き てる

その作品からはものすごいエネルギーを感じて、わたしの中で、苦手だった作家さんが好きな作家さんになった瞬間だった。 そんな、大切な大切な一冊。 作家10周年という節目の作品にもなるようで、この作品からも並々ならぬエネルギーを感じた。 それは、作者である朝井リョウ自身の生きることに対する価値観の変容と、作家としての想像力の拡張、のように感じられた。 作品は全6編からなる短編集。 主人公はだいたいみんなそれなりの年齢で、「何かのために死ぬ気になってもがいている」年代ではない。 何かのために死ぬ気になってもがいて、そこでした選択。 例えば、立ち向かう、逃げる、裏切る、利用する。 成功と失敗。 その時の状況と自分の気持ち。 誰しもが抱えている、過去。 そうした過去を重ねて、今になってまた新たな問題が目の前に降りかかってくる。 でも、その問題はもう、死ぬ気になってもがいたって解決できない。 そもそも答えのない問題だったりすることが多い。 それに、過去の失敗が実は今の成功だったり、過去の成功が今の失敗だったりしていて、何が失敗で何が成功か、それすら曖昧なのに、また選択をしなければならない。 どんな選択をしても、結局は辛い選択で、逃げ道なんてなくて、生きていかなければならない。 選択すら許されない、つまり決断して前に進むしかない場面だってたくさんある。 朝井リョウの作品は、いつだって読者の心を剥き出しにする。 作中で否定的な立場として描いているキャラクターの気持ちにものすごく共感させたり、あるいはこちらが平凡な社会生活を営むために着せている鎧を、いとも簡単に、剥いでしまう。 こういう描き方が、本当に巧い。 本作品では「生きがい」のその先「生きていくこと」に焦点をあてつつも、読者の中にある、とっくの昔にしまいこんだ情熱のようなもの、かつてあった生きるエネルギーのようなものに手を伸ばして抉ってくる。 「ねえ、昔はあったよね、生きる意味とか、エネルギーってやつ。 君は今、何のために生きてるんだっけ?今君は、生きていて楽しい?」と、心のずーっと奥の方まで、手を伸ばしてくる。 「もうやめて!」そう叫んでも、朝井リョウという作家は、決してそれをやめない。 これが、全6編。 結構苦しい。 一話を引き延ばして、それだけで一冊の本を出版できるのではないか、と思えるほどの筆致。 読了後は、心の中にずっしりと残ってくれました。 朝井リョウさん、作家10周年、おめでとうございます。 6篇 『健やかな論理』死の直前のSNS投稿を集める女性。 死にたいから死ぬわけじゃない、という健やかな論理。 『流転』心のまま嘘のない漫画を描こうとしていた豊川、しかし周りの人を裏切って生きてきた。 『七分二十四秒目へ』 派遣を首になった女性、YouTubeを見ながらラーメンを食べる。 『風が吹いたとて』 仕事で苦しむ夫を見守る主婦。 心に風が吹きまくる。 『そんなの痛いに決まってる』 妻は仕事で活躍するばかり。 その一方で転職に失敗する夫。 自分より格下と思う女性と不倫する。 『籤』性別、家族、家庭環境。 どれも選べない。 どれも苦しい内容。 日常を生きる中、酷く苦しさしんどさを抱えた人たちばかりで。 表に出さずに抱え込んでいる人たち。 ポジティブな人とか人間関係でのトラブルにひどく悩まされない人、性格とか気持ちの問題もあるかも、そして、そこまで思いつめないタイプの人はなんでこんなに苦しむのだろうとか思うだろうね。 ただ、今の閉塞感いっぱいの社会は程度のこそあれ、登場人物のような人、多いんだろう、朝井さんはその面を描きたかったのかな。 最後の『籤』は割りを食いながらも生きようとする力強さがあって前向きな終わり方でよかった。 前に進む、どうしても生きるのだ。 日常を生きるやるせなさを細切れに見せてくれる短編集です。 この本読むと、どうしても生きているなあとしみじみ思えます。 そういう意味で秀逸なタイトルだし、よくもここまで人間のしょうもなさと、おかしみを描けるなと感心します。 どの話もオチというオチがあるわけではないのですが、その人が生まれてから長年培った独特な世界の一部分を切り取ったような話です。 悟られたら恥ずかしいような内面的な話なのですが、多かれ少なかれ自分に当てはまる部分があるように感じました。 正直どの短編も読後感良くないし、特に救われる事ないのですが、逆にどんな人生でも自分しか生きることは出来ないと、肯定されているような気になりました。 誰も彼も大満足という人生を送っては居ないと思うし、はた目から見たらみんな自分より上手くやっているように見えます。 自分だけが上手い事やれていないような気になるというか。 僕も人生相当上手くやれていないなと思っていたので、過去を振り返ってやるせない気持ちになったかな。 それだけ今幸せって事なんでしょう。 朝井リョウらしい、現代を反映した短編が6つ。 【健やかな理論】 自殺者のツイッターを見つけ出して、最後のつぶやきを読むという悪趣味を持つ祐季子。 自殺した理由と日常のつぶやきには因果関係なんてきっと無い。 あるいはそうやって信じられる人たちのことをまた羨望してもいる。 ふとした瞬間に幸福を感じることもあれば、衝動的に自殺をすることだってあるのだ。 【流転】 漫画家への夢半ばで諦めて社会人になった豊川。 同期からの独立の誘いを発端に、当時の熱意や志を取り戻せるかと思っていたのに、結局社会の歯車として流されながら生きていくことを選ぶ姿は情けなくて、でも誰も豊川を責められない。 「どこに向かって進んだって後ろめたさの残る歴史を歩み続ける以外に、この人生に選択肢はない。 」という言葉が重い。 【七分二十四秒めへ】 ユーチューバーがアップする馬鹿みたいな動画って何のためにあるんだろうって思ってたけど、なるほどこういうことかと腑に落ちた。 何にも考えずにただ誰かが馬鹿みたいなことをしている姿はまた別の誰かの救いになることもあるんだ。 【風が吹いたとて】 風が吹けば桶屋が儲かる。 バタフライエフェクトにも似たような話。 貫井徳郎の乱反射も思い出した。 でもどれだけ風が吹いたところで、私たちは私たちの目の前の現実をただ粛々と生きなければいけないのだ。 【そんなの痛いに決まってる】 子供を欲しがりタイミング法での受精をせまってくる自分より年収が高い妻に、勃起できなくなった良大。 いつも温厚で優しく仕事ができるかつての上司がSMセックスでよがっている動画を目にする。 痛いときに痛いと言ってはいけなくなったのは、いつからだろう。 本当は、みんな痛いときに痛いって言いたい。 歩き続けるのは前に進みたいからではなくただ止まれないから。 【籤】 出生前診断で陽性がでた鍋倉みのり。 結果を知った夫はよそに女をつくって逃げた。 劇場の支配人という仕事を通じて、人生の明転と暗転について考えた。 舞台であれば必ず暗転するようなどんなにつらい展開があっても、人生は決して暗転しない。 夫がいくら勝手に自分の醜さを吐き出して悦に入っていても、こちらの人生に暗転は起きないのだ。 それは何の区切りでもなく、そのあとも人生はずっと続いている。 でも自分が立つ舞台ならば明転させることはできる。 みのりの強さに涙した。

次の

生きてる!

どうしても 生き てる

全6編からなる短編集。 はっきりいって、そのどれもこれも後味が悪い。 自分のメンタルが弱い時に読んだら、引きずられるかもしれない。 ご注意を。 常にひりつく話を書いている作者だが、今回はいつにもまして社会に対しての闇が深い気がする。 朝井リョウは、現代に生きる私たちがあえて言葉にせず、気付いていても見ないようにしてなんとかごまかしながら生活している泥みたいな部分を「そうはさせないよ?」と物語として紡いでわざわざ私たちに届けてる。 それを読む私たちは、病んでるな、と登場人物を哀れむと同時に、その人と自分とは果たして違うといえるのか?と突然気付いたりする。 つらいですよ。 苦しいです。 短編中最初の5編がそういう、どうにもできない毎日を送る人たちの話が続くんだけど、最後、最後の一編だけは。 最後の一編だってやっぱりどうにもならない現在とか未来とかの話なんだけど、そのどうにもならないことを繋げて生きていくのもまた自分なんだな、って一筋の希望が見えた。 作者は作中、太宰のことをおそらくわざと揶揄しているけれど、朝井さん、太宰みたいですよ?笑 何年も、何十年も経った時、朝井リョウが書くこの閉塞感や人間を見つめた作品たちが、近代文学の文豪たちのそれのように「時代を切り取った」物語になる気がします。 生きる希望が持てました。 6連の短編から成る本作は、どこにでも転がってそうな普通の人々の普通の少し鬱屈とした現状が広がっています。 何気ない日常に転がる、介護に、仕事に、不運。 そんな、どうしようもない現実を受け入れひっそりと頑張り、ひっそりとでも逞しく生きている人がいる。 本作を読んでそんな人々に生きる勇気をほんの少し分けてもらえた気がします。 10代で小説家デビューし、20代で直木賞を取った富も名声も手に入れたであろう著者がなぜこのようなどうしようもない人びとの、どうしようもない日常を丹念に描写できるのか?すごいと感服した。 今まで、著者の作品を読んでて、そんな斜めにもの見るなよ、若者よと思わされることが多かったけど本作は、世間を真っ直ぐに捉え、そこに希望を見出すような、少し成長した、作者の人生観のようなものがうかがえた気がします。 毎日、毎日、学校が大変で、自分の見た目とか、スクールカーストとか、気にして死にたくなっていましたが、がんばってみようかなって思えたよありがとう。

次の

【感想】朝井リョウ『どうしても生きてる』著者の最高到達点がここに!

どうしても 生き てる

でもだぶるおーの5話感想まだ書けてません;;見てる人居るのか謎ですがスイマセン。 日記書いてなかったけど私は元気です。 ハロウィン絵も構想練るだけ練って 結局間に合いませんでした!ああ、なにやってんだろう。 クリスマス絵こそかけるように頑張りたいです。 でもクリスマス終わったらすぐに正月なので、今から下書きとかはじめないと どっちも間に合わないっぽいですね。 頑張ります。 思案中です。 描けたら2種類描きたいけど無理かなー。 年賀絵も今年こそ描ける様に前もって色々準備したいです。 前は友達に借りてやっていたので。 何だか急にアリスのとことピーターパンのとこがやりたくなってしまったんです。 2は未だに放置したままなのに1を買ってやり直すとか何やってんの、って 感じですね。 でも1がどうしてもやりたくなってしまったんですよー。 おおかみも、何年も放置していたんですが9月頃からプレイを再開しました。 あれだけ怖がっていたオロチ戦、攻略サイトさんを隅々まで読んでからやったら そこそこ簡単に済めたので続きをやる気がでたw今は街の方へ出たばかりです。 どっちも数年前のゲームですが、凄くツボに入って買ったものなので やっぱり遊んでてすごく楽しい。 それでも放置してたけど! しかし放置する癖があるのは悪い癖なのは重々承知しているのですが 多分一生治らないんじゃないかな・・・と思います。 きっとゲーム自体がそんなに好きじゃないんだろうなぁ。

次の