それでも ハッピー エンド 小説。 それでも、ハッピーエンド(橋爪駿輝) : ソニー・ミュージックエンタテインメント

それでも、ハッピーエンド(最新刊) |無料試し読みなら漫画(マンガ)・電子書籍のコミックシーモア

それでも ハッピー エンド 小説

「お約束を蹴り飛ばして王道路線をカーブで逸れて」 それでもハッピーエンドへ一直線な前置き。 えー、今回はさんところの「ドリル魔王」の感想をつらつら書きますね。 一部レビューっぽいかも。 寄り道要素いっぱい、エンド分岐有り、全クリ全コンプしようと思うとおそらく30時間くらいは超えた、長編です。 とことんギャグとハッピー。 というわけで、良かった点など。 たるを調べがちなあなたに 民家に入るとまず住人よりタンスを調べる、そんなプレイヤーにおススメしたい作品だなあと感じました。 いやもう、探索ポイントがこれでもかというほど詰め込まれてるんですよ! あまりの凝りよう、芸人魂、寄り道要素やちょっとしたネタ会話に辛苦と命を燃やす意気込みが垣間見えました。 本作は経験値が廃止されていて、強敵を倒すともらえるレベルスターで自動的にレベルアップしていく仕組みなのですが……探索をすることでレベルスターに属するスターダストなるものを手に入れることもできます。 アイテムが手に入るうえに会話もたのしい! これはおいしい! ……ということをキャラ自身が喋っていてもおかしくない、メタギャグも盛りだくさんです。 かわいさとプロペラとシュールギャグが暴れ狂う展開 内容はざっくりといえば勇者魔王もの。 女勇者と言うとカッコイイ響きですが、実際は なんと13歳の少女。 しかも進むうちに プロペラが生えたり超重量系要塞になって魔王に撃ち落されたりします。 未プレイの方はわけがわからないと思いますがプレイしてもわけがわかりません。 そこがいいんだよなあ! 「どうしてこうなった!?」って言いたくなるシュールなギャグが目白押しなんですよ。 ツッコミが追いつかない。 それでいてこう……笑わせてやろうみたいな意気込みのものでもなくて……粛々と勢いよくトンチキなことが起こりまくります。 妙に冷めたメタギャグや、いそいそとなかったことにしたがる物言いたげなウェイトの取り方など、頭のどっかで冷静な雰囲気がより笑いを誘ってくれました。 良妻賢母やクールビューティ魔王様 ギャグシーンが重なるにつれ、キャラの意外な一面が見えるところも魅力の一つ。 特に、意外なキャラがアグレッシブに属性を開花させてくれた時は、そりゃもう嬉しすぎて小躍りしました。 かっこいいだけ、かわいいだけで終わらないキャラがたくさんいます。 カッコイイお兄さんは歴戦のエロゲプレイヤー、謎の魔女様は残念技量のなろう作家、クールな魔王はカレーに一本釣り。 不敵な中ボスはしれっとお笑いキャラになってたり。 この、登場人物の隙の作り方が上手いなーと思いました。 隙があるとキャラに親しみが持てるんですよね! ああもうこいつは仕方ないなあ、みたいな、つい身内びいきの視線で見ちゃうなど。 何が何でも重苦しいシリアスは投げ捨ててギャグに走り抜けるんだという気概も感じました。 娘やゲーマー・オタクキャラや男女カプが好きな人はきっと幸せになれます! そう私! ありがとうございました!! ここぞという時のSE トンデモトンチキな面を推して参りましたが、 効果音もなかなかの鬼才を放っています。 例えば、スキルを習得する時ってなんとな~く、ピキーン!とかフワァアアアアみたいな、天啓が降ってくるっぽい効果音が多い気がするんですよ。 本作はここすらも発想が違います。 実際の音は聞いて頂くとして……。 いやー、プレイしてて笑っちゃいました。 そういうとこだよ。 この手の衝撃が一発ネタで終わらず延々と続いてくれるところも大好きです。 あと他にも、タダータダータダーみたいな幼女声の効果音が好きです。 かわいい。 奇想天外な会話に、愉快な効果音、さらにはスタイリッシュでクールなキャラチップが加わり、シュールギャグがより鋭くキレを増しているように感じました。 バフデバフインフレ999祭り さて、本作のもう一つの特徴がバトルの難易度。 本作は5章構成なんですが、 4章辺りからは999ダメージがバカスカ飛び交うインフと化します。 加えて状態異常の数も異様なほど多く、スキルや装備品の説明に書いてない(書き切れない)効果が起こることもしばしば。 バフデバフが勝利の鍵、特に序盤はこっちが耐性上げるより相手の耐性を下げる方が重要な感じでした。 バフデバフゲーというと装備品でパズルするイメージもあるんですが、本作は 最終的に状態異常耐性もインフレして全防御できるようになるので、そこまで頭を悩ませることはなかったかなと思います。 要は、スキルが重要! 能力や耐性を上げて下げて状態異常かけて延々とぶん殴り続ける感じのバトルでした。 この手のバフデバフさえしとけばいいくらいのコマンドバトル好き。 といっても、上記で述べた通り 雑魚敵で経験値稼ぎができないため、難易度はかなり高めです。 スキルやアイテムの多くや探索と寄り道要素で手に入るので、本筋だけ追おうとすると逆に詰んでしまう可能性もあります。 かくいう私も序盤のワンワン戦で2度ほど全滅しました。 へっへ。 ただ逆にいえば、探索さえしていれば十分にクリアできます。 繰り返すように、たる調べ隊なプレイヤーには垂涎ものの一作とも言えるでしょう。 私なんかはキャラ重視なので、好きなCPの会話を回収してたらいつのまにか最強キャラが生まれてたみたいな感じになってて、感慨深かったです。 愛、重量級。 プレイ前に了解しておいたほうがいいかも 未プレイヤーの方に誤解を与えないよう、ちょっと事前に書きおいておきたいことも挙げておきますね。 手間のかかる謎解きあり• 時限イベントあり• 時事ネタ、他ゲーネタ、パロネタもりだくさん• 飛空艇で飛ぶときにバグが起こるので事前セーブ必須• 撃破しても魔物図鑑に載らない敵がいる こんな感じ。 といってもバグバグしいゲームではなく、基本は楽しく勢いよくがっつりプレイしたくなる良作なので誤解なきよう! ただ、冷める人と熱中する人が極端に分かれるかなとは思います。 好きならむしろお約束をわかったうえでネタを楽しめるかと。 とまあ、こんな感じで。 メタネタ・シュールギャグ・ツッコミ不在展開が好き• には飛空艇が欠かせないと思う• タルとタンスはくまなく調べたい• 相棒っぽい関係の男女コンビやラブラブルが好き• 真面目で重たい展開は見てて恥ずかしくなっちゃう• 元気いっぱいハッピーエンドで締めたい そんなあなたにおススメしたい良作でした! なお、取り逃がし嫌いな方やに自信がない方は心が折れないように、「は躊躇せず頼る」「エンド1・2は(ラスボスの難易度的に)2周目にとっておく」あたりをおススメしておきます。 追記ではネタバレ感想。 ネタバレ注意 攻略とか? 公式サイトに併記されていたと個人をガッツリを遠慮なく見ました。 そしてどうやら、魔物の撃破履歴はアイテムで管理してる……のかな……? エンド3に行ったデータでエンド1も見たんですが、エンド3の時点で撃破していたアリアが魔物図鑑に載っておらず首を傾げ、さらには女神へのお願いをアイテムにしたのでおばけロードへ再挑戦できず、最後まで図鑑が載らずに悔しい想いをしました。 滝の裏のダンジョンも、道中で取ったアイテムがあっても最後までクリアしないと記録されないっぽいです。 コンプ癖の方はご注意。 ライラ ライラかわいいですよね!!!!?!?!!?!! もうこれは大っぴらに書いてしまいますがエクスとライラが大好きでほんとこの二人に出会えて良かったバンザーイ君と二人でハッピーって感じでした。 ありがとう。 かなり初期からフラグが立てられていたこともあり、出会った時にはしみじみと感慨深かったんですよ。 ああこの子が噂の、みたいな。 それがまさかの良妻賢母ですよ!! 惚れるしかなくないか!?! いやーでも言うてプレイしてる時は怖かったんですよ。 いやライラがじゃなくてライラの扱いが。 どうしても娘ってこう、嫌がられがちというか、なんだかんだで一方通行が既定ルートになっちゃうじゃないですか。 ギャグ作品だと特に、「好き!」「やめてくれー(ガチ拒否)」でネタとして終わっちゃいがちで、側の愛情が結局雑に放り捨てられたままになっちゃって、それが娘推しとしてはすごく寂しいんですよね……。 しかも相手は王子様なわけで、そりゃ離ればなれになるだろうなあ怖いなあと覚悟と保険をかけつつ進めてたんです。 そしたらまさかのハッピーエンドですよ!!! というか作中で着々と二人の関係が進行したうえにデートですよ!!!!!! 私は泣いた、あまりにも嬉しすぎて泣いた、喜びのが高らかに天を貫いた……。 とても嬉しかったです。 ほんとありがとう、マジでありがとう、キャラの内面に関わるところまでハッピーにしてくれて心からありがとう……。 好き……。 エクス側もなんだかんだで可愛いと思ってたり拒否はするけど想いは否定してなかったりやり方は困るけどまんざらでもないみたいな態度だったりするのがすごく良いですよね、へへへっ……。 END3・4の裁判イベントが心底好きです。 好きすぎて書き散らした二次創作晒しときますいえーい キャター レッシーよりもエクスのことを女だと思っていたプレイヤー私。 レッシーは確か宿屋かどっかで男と明言されていたので、温泉イベントで逆に「みんな知らなかったんだ!?」という驚きを感じました。 魔王の嫁ネタもありましたし、作者様はちょこちょこVIPRPG齧ってるのかなー、なんて。 フレイとエクスの設定がやっぱり面白かったですねぇ。 特にエクスの伏線の大盤振る舞いがグッド。 よくよく読むと船着き場でエクスはイノと違って剣とも妖精とも言われずきっちり男認定されてるんですよね。 あとエクス操作時のエクスピアの看板でもちょっと語られてますし、4章以降は伏線の嵐ですし。 伏線の撒き方が多彩で、しかも一見ネタっぽく流されているのでなおさら楽しかったです。 フレイのほうも、重々しいはずの設定なんですが……ここをカラッと笑い飛ばしちゃうところが好き! わぁい友情パワー。 ちょこちょこダークなことを口走るところも好きです。 END1を見るに、別次元の世界?にいたティアさんがレッシーたちの世界へやってきて、ついでにフレイちゃんの運命?をちょちょっと弄っちゃった関係でこの世界はギャグ世界になった……のかな! とりあえずティアさんとツムグ君はなんかフラグが立ってるっぽい気がします。 でも細かいことはいいのかもしれない! ドリル魔王だから! ところでノーはノトーリアスなんですかねノーなんですかね。 のっちゃんで良い? おっけー。 キャラチップやマップ プレイし始めた時はキャラチップの小ささに驚きました。 ウディタ規格っぽいなあって。 そしてマップは広いもんだから、はたしてついていけるかなと不安だったんですが、実際は全くの杞憂。 だって人外魔境だし……。 ええ……。 余談ですがああいう文字のマップチップってどうやって作ってるんでしょうね。 手打ち? あ、でも真面目なことも語っておくと、飛空艇の中でレッシーが黄昏てる時に話しかけるとフレイちゃんのことを心配してくれるところが好きです。 背景の壮大さと洗濯物のシュールさとが合わさってとてもこの作品らしくてよき。 ツボったセリフやシーンなど• ラスボスを倒そうが死ぬことはないけどなるべく急いだほうがいい犬• 敵ボスが大事なセリフを噛むと全力で煽っていくスタイル• なんか怪しい地形だから調べてみたけど特になにも起こらない木• 数字入力でフレイ操作時に「072」って打っても何も起こらないけどレシア操作時に打ち込むと反応してもらえる• 人の話を真面目に聞かないことにかけてはかなりの実力者• とっさに『ぬ』と口走ってしまった• ワードの絵本を語り聞かせようとするフレイ 挙げようと思えばいくらでも挙げれるんですが、中でも特に呼吸ができなくなるくらい笑ったり、何度も見返したくなってスクショを撮ったりしたのはこの辺りです。 目下語りたいところはこんな感じかな! おいおいってツッコミ入れたくなるシーンが多くて、一緒になってにこにこ笑って、エンドロールで拍手しながら爽やかに終われるとっても明るいでした! shikimz.

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フリーゲーム「ドリル魔王」感想

それでも ハッピー エンド 小説

さん、にぃ、いち……。 ゼロがくれば、あなたからの電話が鳴る。 そう期待して、カウントダウン。 もう何百回くり返してるだろう。 子どもっぽいおまじない。 換気扇の下、センチな気分に酔って、あなたが吸っていたのと同じ銘柄の煙草に火をつけてみる。 やっぱりというか、なれず、ハデにむせた。 肺がひりつく。 そんな自分にいらつく。 わたしの唾液がフィルターを濡らす。 煙の白い線が換気扇に飲みこまれ消えてなくなる。 まるで、あなたとの関係性のように。 * 太陽は真上にあった。 透度の高い、空の青さに目の奥が沁みた。 それでも負けず、わたしは顎をあげる。 ひこうき雲の線がじんわり溶けはじめている。 桜並木には、祝福の声がこだましていた。 満開だった。 ひらひら舞いちる花びらのなか、みんな写真を撮り、ハイタッチし、はしゃいでいた。 早起きして美容室で結ってもらった黒髪。 本当は買いたかったけど、お金がないから仕方なくレンタルした着物。 だれかが『人生の夏休み終了!』と書いた横断幕をもって叫んでいる。 わたしたちは美しかった。 たしかに、未来はこの手にあったんだ。 だって、あなたは照れくさそうに微笑んで、いってくれたから。 「卒業しても、俺らはなんも変わんないよ」 その言葉をわたしはしんじた。 あなたの頭皮の匂い。 すこしのびた手の爪。 舌の感触。 朝焼けに染まったシーツには、ふたりの形がシワとなって残っていた。 確かにわたしは、あなたの言葉にうなずいた、はずだった。 でも、日々はどうやったって過ぎていく。 むごいほど、わたしやあなたに目もくれず、うごいていく。 過去は変わらない。 不確かなのは、今のほう。 かよっていた美大を卒業し、あなたは有名な広告代理店に、わたしはその下請けの下請けをこなす、イラストがメインの制作会社に入った。 四月を越えた先にあった現実は、ただの早起き。 ただの満員電車。 ただの上司からの注意。 ただの残業。 その「ただの」が、あなたとの時間を壊していった。 描きたくもない絵を描いて、急な発注の変更に対応して、それでも結局ボツになったりして、あー、たぶんわたしはいま鬱なんだろうなとか思ったりしていたら、家からでれなくなっていた。 おもにコンビニの袋や、飲みかけのペットボトル、汁の固まったカップラーメンなんかで構成されたくらい部屋で、スマートフォンを眺める。 画面に映るわたし。 が、笑ってこっちを見ている。 バカみたい。 ピースして、変顔して、あなたに抱きついて。 バカみたい。 もうあんな顔できない。 あんな顔して笑えない。 * 小雨が降っていたあの日、あなたはいった。 「なんで、こうなっちゃったんだろうな」 「わかったらこんなことなってないよ」 そういってわたしは、おかしくもないくせして笑った。 でないと、泣いちゃいそうだった。 わたしは笑い続けた。 鼻水たらしながらバグったみたく笑うわたしを、あなたは困った顔で見ていた。 なにかいいたいのに、いえない。 いわない。 そんな顔。 で、あなたはわたしを黙らせる。 あなたは器用でずるい。 会う頻度で、会話のちょっとした間で、わたしへの気持ち、その度合いを示す。 最後の言葉さえ、わたしにいわせた。 そう、わたしたちは「ただの」元・恋人。 知ってる。 わかってる。 のに、もう一度だけ会いたかった。 あんなに一緒にいたのに、部屋のどこを探してもあなたの気配はなかった。 唇にできた吹き出物がシーツにこすれる。 いつも寄り添ったはずのベッドにさえ、あなたの匂いは見つからない。 涙がでなくて、どうしていいかわからなくて、ひたすら、枕に鼻を押しつけた。 お別れの日、自分の荷物だけきれいさっぱり持っていった、几帳面なあなたを恨む。 あなたは逃げたんだ。 わたしから。 こんなダメなわたしから。 * バックれた会社からの電話も鳴らなくなった。 日が暮れるとともに目を覚まし、日が昇るころに眠る生活。 もうそれは日常になっていた。 支えは、一応振り込まれていた先月分の安月給。 寝すぎと運動不足で痛む腰をさすりながら、やっと身体を起こす。 今日も部屋はくらい。 炭酸のぬけたコーラで喉を潤し、伸びすぎた前髪をかきあげる。 学生時代のほうがよっぽどマシだった。 ザ・廃人のできあがり。 地球上で無意味な生き物ランキングが開催されたら、きっとわたしはかなり上位に食い込む。 なんて、無意味な妄想にふけりながら、期待半分のカウントダウンをしてみる。 さん、にぃ、いち……。 ゼロの寸前、電話が鳴った。 おめぇじゃねえよ。 スマートフォンを壁に投げつけたかったが、とりあえず電話にでた。 ユリちゃんは日本画で、わたしは油絵。 専攻はちがったが、サークルが同じで学生のころはたまに飲んでいた。 ユリちゃんは大学卒業後も就職せず、カラオケ店でホールのバイトをしながら絵を描きつづけている。 そんなユリちゃんを、内心バカにしていた。 こんな先のわからない時代、才能をしんじて、夢なんか追って。 どうせ咲かない花のくせして。 『あんた、仕事辞めたんだって?』 あらためて言葉にされるとけっこうダメージを食らった。 だいたい、どこからその情報仕入れた? まだ親にもいってないのに。 が、かろうじて踏ん張り「なに、冷やかしの電話? 性格わる」といい返す。 『ごめんごめん。 そうじゃなくて、今度個展やるから来ないってお誘い』 「コテンって、あの個展?」 他になにがあんのよ、と笑われながら、場所と時間を聞いた。 『どうせずっと引き込もってんでしょ。 たまには外出なよ?』 うっさいな、といい捨て、わたしは電話を切った。 またひとりになった。 * 化粧なんかしたの、いつぶりだろう。 以前はわりと、おしゃれは好きなほうだった。 けど、イラストの制作会社に入ってからは睡眠不足とストレス、それに機械のごとく働きつづけるキモい同僚たちとの毎日にかまけて、顔はマスクで隠せばいいやという女になっていた。 当然引きこもってからは、誰に見せるでもないスッピン。 出がけ、鏡に映ったわたしはちょっと気合いが入り過ぎてる感じがして、化粧をやりなおした。 外にでると、久々に直で受けた日差しが痛かった。 鳥のさえずりもピーチクうざい。 街の活気にたじろぎながら、重い足をひきずり駅へと進んでいった。 ピッという自動改札の音さえわたしを威嚇してくるようだった。 何度か電車を乗りついでやっと着いたのは、代沢にあるギャラリー。 外で、数人がコーヒーを飲みながら談笑している。 脇をすり抜け、ちょっと重たい扉を開いた。 広くはないけど、白を基調としたシンプルな打ちっ放しの内装で清潔感のある空間。 その壁三面が、四季折々の花の画で彩られている。 まだ花ひらくまえの、桜。 細いながらしっかり支える枝に、咲いていないからこその、未来への生命力にあふれた蕾たちの姿が描かれている。 その隣では深い群青の花弁をたたえた紫陽花が、雨の雫に濡れ、つつましやかな美しさを放っている。 夏の日の、向日葵。 香りさえただよってきそうな晩秋の金木犀。 冬の厳しさを耐えぬいて咲いた、梅の花。 どれもが瑞々しかった。 かなり繊細な岩絵具と水と膠のバランスでないと生まれない色彩。 「来たんだ」 声をかけられるまで、自分が魅入っていたことさえ気づかなかった。 ふり返ると、紺のワンピースを着たユリちゃんがにやついて立っていた。 「すごいじゃん」わたしはいった。 なんのためらいもなく、心からの感想が言葉となってこぼれる。 「へへ、そうかね」 「そうかねじゃないよ。 これ、ずっと描いてたの?」 「うん」 ユリちゃんは八重歯をだして、笑った。 晴れ晴れとしたその笑顔が、逆にこれらの作品にどれほど魂を注いだか、その証明のように思えた。 ほかの来場者から名前を呼ばれ、ユリちゃんは「はーい」と元気な声で答える。 忙しそうだ。 画集でも買ってやれたらいいけど、いまのわたしにそんな余裕はない。 じゃ、といって、わたしはユリちゃんの邪魔をしないようそっと出口へむかおうとした。 そのとき、腕を掴まれた。 「あんたも描いてみれば」 ユリちゃんは笑わず、まっすぐわたしを見ていった。 「あたし、あんたの描く画、わりと好きだったよ」 聞いたことのある台詞だった。 そう思ったら、あなただった。 あなたはいつだって、わたしの描いた画の最初の鑑賞者だった。 「俺、お前が描いた画、好きだよ」 いま思うとちょっと上から目線の感想だけれど、他人の作品をあまり褒めない人だったから、素直に嬉しかった。 帰り、新宿の世界堂で二十号カンバスを買った。 しずみゆく夕日がわたしの頰を真っ赤に染めた。 * 買ってきたカンバスを、イーゼルに立てかけた。 むきあう。 まっしろの、まだなにもないカンバスに。 これは世界だ、と思う。 このまっしろな世界に、わたしはなにを描くのか。 しばらく、じっとしてただ見つめていた。 いまのわたしが、描くもの。 描くべきもの。 「いいかい、怖かったら怖いほど、逆にそこに飛び込むんだ」 むかし、岡本太郎はそんなことをいったらしい。 あなたが自慢げに教えてくれたのが、なんか懐かしい。 しばらく押入れで眠っていた、筆の感触。 軽く、柄を握る。 パレットに広げた十二色の絵の具。 油壺からただよう溶き油の匂い。 ゆっくりと息を吐く。 目をつむる。 筆先が身体の一部となっていく。 わたしは、あなたの街にいた。 無人のコインランドリーが夜道に光っていた。 直してって頼んでも、かたくなに修理しなかった洗濯機。 脱ぎ捨てたふたりの衣類をポリ袋につめ込んで、わざわざここまで洗濯にかよった。 「こっちの方が、洗った感じすんだよね」という、あなたの妙ないい訳を思いだす。 商店街に、人の気配はない。 猫がどこかで啼いていたが、姿は見えない。 ヤー、ヤー、ヤー、と奇声をあげながら、あなたの自転車の後ろに乗った夏もあった。 精肉店のコロッケをふたつに割って、分け合った冬もあった。 スニーカーの底、わざと剥げかけたアスファルトでこすった。 どの店もシャッターは降ろされ、冷たい月がわたしを見下ろしている。 繋いで歩いたあなたの手。 その感触、その温度。 ずっと、こびりついて離れない。 路地を曲がる。 せまい道の両脇に、アパートがひしめく通り。 いつだって、雨に似た匂いが、この路地には立ち込めている。 はじめてあなたにキスされた場所だから? 目を閉じて、おそるおそる唇を寄せたあなた。 を、本当はわたし、ずっと見ていた。 胸がはずむようだった。 つま先に力が入った。 あのころのわたしはまだ、髪が長かった。 出会ったのはサークルの飲み会。 お金なんかないから、宅飲み。 場所はあなたの家だった。 さんざん飲んでみんな寝静まった夜更け、床で目を覚ました。 あなたは隣で眠っていて、寝がえりをうった拍子、足が触れ合った。 かかとは乾燥してカサついていた。 あの、ドキドキ。 あなたの優しい寝息にも触れてみたいと思った。 だれかが酔って倒した窓際の花瓶から、水がこぼれていた。 床にできた水たまり。 反射した、すんだ月明かりが綺麗だった。 懐かしい街で、わたしは叫ぶ。 あなたの名前を大声で叫ぶと、返事が聴こえた。 ああ、こんな声だったな。 その声を追うように、足を進めた。 いや、走った。 膝を高くあげ、全力で走った。 関節が擦り切れてもいま走らなきゃ、ずっと後悔する。 わかりきったこと。 でも、できなかったこと。 坂をのぼりきると、小高い丘にある公園が見えた。 いつか遊んだジャングルジムは、砂場に切り絵のような影をつくっていた。 あなたは、ブランコに腰かけ煙草を吸っていた。 長いまつ毛を瞬かせ、「よお」という。 わたしも「よお」という。 次の瞬間、丘のむこうに広がる街々が輝きだした。 部屋に立てかけたカンバスには、あなたと居た街があった。 もうすぐ夜が終わる。 気づけば全身、汗で濡れていた。 いやな汗じゃなかった。 その場にへたり込んで、筆をパレットに置いた。 本当はずっと一緒にいて、わたしのこと全部わかってほしかった。 弱いとこ、ダメなとこ、あなたにもっといっぱい受け止めてほしかった。 けれど、二十数年ずっとわたしを生きている自分がわたしのこと受け止めてきれないんだから、まぁ、無理か。 希望はなくとも、あなたがいなくても、わたしはこれからもわたしを生きていかなきゃいけない。 あなたといた、恋しい日々を抱きしめて。 きっともうわたしは、カウントダウンなんかしないだろう。 子どもじみたおまじないなんかに頼ることはないだろう。 すくなくとも、カンバスのなかにいる二人の風景は、ハッピーエンド。 それだけでよかった。 あなたからの電話の代わりに、お腹が鳴った。 もうちょっとしたら、たまには朝食でもつくろう。 そんで、お腹いっぱい食べよう。 そうしよう。

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#ダンキバ それは圧倒的ハッピーエンドで終わった。

それでも ハッピー エンド 小説

スポンサーリンク 歌詞 過ぎてゆく時間の中 あなたを思い出す 物憂げに眺める画面に映った二人 笑っていた 知りたくないほど 知りすぎてくこと ただ過ぎる日々に呑み込まれたの それでもただもう一度だけ会いたくて あなたの言葉に頷き信じた私を 一人置き去りに時間は過ぎる 見えていたはずの 未来も指の隙間をすり抜けた 戻れない日々の欠片とあなたの気配を 今でも探してしまうよ まだあの日の二人に手を伸ばしてる 境界線は自分で引いた 「現実は」って見ないフリをしていた そんな私じゃ 見えない見えない 境界線の向こうに咲いた 鮮烈な花達も 本当は見えてたのに 知らず知らずの内に 擦り減らした心の扉に鍵をかけたの そこにはただ美しさの無い 私だけが残されていた 青過ぎる空に目の奥が染みた あの日の景色に取りに帰るの あなたが好きだと言ってくれた私を 誰にも見せずに この手で隠した想いが 今も私の中で生きている 目を閉じてみれば 今も鮮やかに蘇る景色と 戻れない日々の欠片が 映し出したのは 蕾のまま閉じ込めた未来 もう一度描き出す あの日のあなたの言葉と 美しい時間と 二人で過ごしたあの景色が 忘れてた想いと 失くしたはずの未来を繋いでいく 戻れない日々の続きを歩いていくんだ これからも、あなたがいなくても あの日の二人に手を振れば 確かに動き出した 未来へ 作詞:Ayase 歌詞の意味・解釈 1番 過ぎてゆく時間の中 あなたを思い出す 物憂げに眺める画面に映った二人 笑っていた 前提として、本楽曲の歌詞では 失恋した主人公が何とか前を向こうとする姿が描かれています。 ただ細かい部分で言うと、失恋の後悔や過去の想起まで描かれているため、 失恋を経験したことがある人すべてが共感できると思います。 まず歌い出しの歌詞で描かれているのは 失恋後のありきたりな情動。 あなたを失って過去に囚われている主人公は、幸せだったころの思い出を想起しているのです。 知りたくないほど 知りすぎてくこと ただ過ぎる日々に呑み込まれたの それでもただもう一度だけ会いたくて ここは原作小説を見ないと解釈が難しい部分になるのですが、はじめの三行は 自分から彼を振った主人公を表しています。 彼のことを知り過ぎて、些細な態度や言葉遣いだけで、彼の自分に対する気持ちを悟ってしまったのです。 だから主人公は自分から別れを告げてしまう。 つまり ただ過ぎる日々に呑み込まれたというのは、まさに不安に呑まれて解放されるべく別れを告げた主人公そのものなのです。 しかし好意が消えたわけではありません。 だから 「もう一度だけ会いたい」という気持ちを抱えながらも、彼のいない日々を過ごしていきます、、、 サビ1 あなたの言葉に頷き信じた私を 一人置き去りに時間は過ぎる 見えていたはずの 未来も指の隙間をすり抜けた 戻れない日々の欠片とあなたの気配を 今でも探してしまうよ まだあの日の二人に手を伸ばしてる 「俺らは変わんないよ」 付き合っていた当時、あなたは不変の約束をしてくれた。 今では千切れてしまった約束。 しかし微かな期待を胸に秘め、また孤独な時間を過ごしていく。 暗い歌詞なのに、曲調はアップテンポで明るい。 これは自分から彼を振ってしまうほど強がりな主人公を映しているような気がします… 別れてもなお、過去の二人に手を伸ばす主人公はこれからどうなっていくのでしょうか。 2番へと続きます。 2番 境界線は自分で引いた 「現実は」って見ないフリをしていた そんな私じゃ 見えない見えない 境界線の向こうに咲いた 鮮烈な花達も 本当は見えてたのに 2番でも1番のBメロと同じように、 彼を突き放した後悔が描かれています。 鮮烈な花たちというのは、鬱でモノクロな世界に入り込んでしまった自分とは逆の位置にいる、 カラフルで色鮮やかだったはず未来を示しているのでしょう。 なぜこんなにも後悔してしまうのに、主人公は彼を突き放してしまったのか。 「知り過ぎた」以外の理由が続く歌詞で描かれていきます。 知らず知らずの内に 擦り減らした心の扉に鍵をかけたの そこにはただ美しさの無い 私だけが残されていた 青過ぎる空に目の奥が染みた あの日の景色に取りに帰るの あなたが好きだと言ってくれた私を その理由は 「美しさのない私」にあったのです。 原作小説の方では多忙な会社に勤めの結果、生気や余裕を失ったことで、美しさのない私になってしまいました。 過去の失恋の原因に「自己肯定感の低さ」がある人は、形は違えど共感できるのではないでしょうか。 回想を繰り返す中で過去との決別が付いてきた主人公は、美しさのない私を打破するために、 青すぎる空に目の奥が染みていた頃の自分を取り返そうとします。

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